KPIとは
1.勝つKPIの定義
1-1.KPIの定義
一般的にKPI(Key Performance Indicator 重要業績評価指標)とは、その組織が組織目標に対してどのように実績を出しているかという、ベンチマークをするための指標です。通常その組織の戦略目標に深く紐付いています。日本経済の停滞とともに、生産性向上とそれに必要なKPI管理の必要性が叫ばれて久しいにもかかわらず、実際は多くの企業がKPIを間違った形で運用し、望むべき結果を得られないという残念な結果に陥っています。
KPIを正しい形で導入できると、企業の業績を大幅に向上させることが可能です。しかし、残念ながら多くの企業ではKPIが間違った形で導入され、業績向上に貢献しないのはもちろん、毎日同じレポートが、昨日作られたという理由だけで作成され続けています。
そもそも何故KPI管理が重要なのでしょうか。下記の図が端的にKPI管理のメリットを端的に伝えています。通常の会社では月次、もしくは週次の営業会議などでパフォーマンスを図っていると思います。しかし月末に数字が未達であると気づいても、往々にして遅すぎてその月の目標を達成することは出来ないでしょう。
一方でKPI管理で勝ち続ける会社で実施されているオペレーションは、日次での実績管理です。各個人が帰宅前もしくは翌日出社後一番にに当日(又は先日)の数字をアップデートし、チーム内での朝礼にて昨日までの数字を確認、未達の場合には早急に対策を考えます。
この、改善するスピードの違いが長い目で見た企業の業績に反映されます。従業員全員が数字に責任を持つことで「やる切る力」を伴う戦う組織に変わる事がこのKPI管理の目的ともいえるでしょう。
1-2.KPIの種類
次に一言でKPIと言ってもKPIにはいくつものタイプがあり、一般的な企業ではそれらをまとめてKPIと呼んで間違った運用をしていることが通常です。先ずはKPIに4つのタイプがあることを理解することから始めましょう。
Key result indicators (KRI) はいかに貴社が重要成功要因を実行したかを示します
Result indicators (RI)は貴社が何を実行したかを示します
Performance Indicators (PI)は貴社が何をしないといけないかを示します
Key Performance Indicators (KPI)はどのように貴社のパフォーマンスを劇的に上昇させるかを示します
多くの企業で使われているKPIという用語はこれら全てを混同して使われています。
玉ねぎに例えると玉ねぎの皮がKRIとなり、どのような見た目、結果が得られたかを見ることができます。そのKRIの皮を剥くことで、RIやPIを見ることができ、その中心に位置するのが管理すべき最も重要なKPIとなります。
[Key result indicator] KRI
ではまずKRIとはそもそも何でしょうか?KRIは一般の企業ではよくKPIと混同して使われています。KRIの代表例としてあげられるのが、下記となります。
営業利益
投資回収率
顧客の収益性
既存顧客からの収益
これらの指標の一般的な特徴は、多くがあらゆる行動の「結果」を示すものということができます。KRIは貴社が暗闇の中、問題なく飛行しているかという結果を教えてくれます。しかしながら、それらの結果をどのように向上したらいいかは教えてくれません。これらのKRIは取締役会など日々のオペレーションに携わっていない重役への報告にはある種の意味をなしますが、日々のオペレーションには意味をなしません。
KRIは通常KPIよりも長い期間の結果を示します。大抵の場合、月次や四半期ごとの報告書に用いられ、KPIのように週次や日次の報告に使われることはありません。企業のガバナンスのために各種の報告書が必要であり、その中のハイレベルな情報として10個ほどのKRIが記載され、その下に企業の最重要経営方針毎に各種RIやPI、KPIが含まれるというのが一般的な内容となっています。
[Performance incicatoreとResult indicator] PI RI
通常KRIとKPIの間に80個ほどのPIやRIが作成されます。PIは重要ではあるものの企業の主要な指標ではありません。むしろ各チームがいかに会社の目標に沿って動くかという指標になります。PIの代表例としてあげられるのが下記になります。
トップ10顧客による売上の上昇率
顧客からのフィードバックの数
主要顧客からの苦情件数
パフォーマンスマーケティングROI
一方、RIは活動のまとめということができます。通常全ての円やドルなどで表される財務情報はRIに分類されます。売上の分析などは最たる例で、日々の営業活動の大きな助けになる一方、その数字の変動を理解するには、各数字をもたらした個別のアクションに分解しそれらを一つずつ確認していく必要があります。RIの代表例としてあげられるのが下記になります。
主要商品の粗利益
昨日の売上
新規顧客獲得コスト
[Key performance indicator] KPI
それではKPIとは一体何でしょうか?KPIとはその組織の現在のそして未来の成功のためにもっとも重要でクリティカルなパフォーマンスを測るべき指標となります。往々にしてKPIは新しいものではなく既に運用はされているものの、企業運営を実施する上で最も重要な要素としては認識されていません。
2.勝つKPIの6つの特徴
次にKPIには下記のような6つの特徴を見て取ることができます。
計測可能で頻繁に計測される必要があります(24時間、日次、少なくとも週次で計測可能)
従業員によるどういうアクションが必要かが明確に示され、的確なアクションが自然に生み出されます(コントロール可能)
責任はチームレベルに落ちる必要があります(責任者が明確。社長はいつでもチームリーダーを呼び出し必要なアクションを取らすことが出来る必要があります)
KPIは財務関連の指標ではありません(円やドルでは表示できません)
社長か批准する上級役員によってトップダウンで推進される必要があります
会社の業績に大きなインパクトがあります(いくつかの重要成功要因や戦略目的達成の成否に直結する影響力をもっています)
1.計測可能で頻繁に計測される必要があります(24時間、日次、少なくとも週次で計測可能)
基本的には24時間365日、日次、最低でも週次で計測されるべきものです。月次や四半期、半期ごとの指標がKPI足りうることはありません。というのも物事が起こった何日も後に計測しているのであればその指標が貴社のビジネスの「KEY」であることはないからです。KPIとは現在もしくは未来に起因する指標であり、過去の出来事を振り返る指標ではありません。残念ながら多くの企業では過去の指標を管理しています。またブランドアウェアネス等、日々トラックができない指標は重要であってもKPIの採用には向いていません。
2. 従業員によるどういうアクションが必要かが明確に示され、的確なアクションが自然に生み出されます(コントロールが可能)
KPI自体がどのようなアクションが必要かを教えてくれます。そのKPIが目標に達していないのであれば、どのレベルの従業員も何をするか分かっている必要があります。 KPIを設定する前に、それらは各マネージャー、従業員に対して望ましいアクションを自然にもたらすかどうかをテストする必要があります。一方で間違ったKPIを選択したあまりKPIが全く機能しないアクションをもたらした事例は多数あります。
3. 責任はチームレベルに落ちる必要があります(社長はいつでもチームリーダーを呼び出し必要なアクションを取らすことが出来る必要があります。責任者が明確。)
KPIは各チームの活動に結び付けられる必要があります。別の言い方をすると社長はいつでも担当のチームの誰かを呼び出し「何故数字が落ちているのか?」と聞くことができます。従い資本利益率などはKPI足りうることはありません、何故ならそれは各チームの活動に結びつけられないからです。それは各チームの総合的な活動によりもたらされる結果だからです。責任の所在を明確にすることが非常に重要な要素となります。
4. KPIはファイナンス関連の指標ではありません(円やドルでは表示できません)
この点は多くの企業が間違って解釈していますが、円マークやドルマークをつけた時点でそれはKRIに変換されたと考えられます。KPIはそれらのKRIよりもはるか深くに存在すべきものです。例えば売上の主要な割合を占める顧客とのコンタクト回数などが考えられます。
5. 社長か批准する上級役員によって推進される必要があります
全てのKPIには会社の業績を劇的に変える力があります。それは社長自らが多くの時間を割いて監視しているからです。社長は必要であれば毎日現場の責任者に電話します。毎日社長から変化の理由を追求されるのは当然現場からすると心地よいものではなく、それ故に大きな推進力が発生します。
6. 会社の業績に大きなインパクトがあります(いくつかの重要成功要因や戦略目的達成の成否に直結する影響力をもっています)
いくつかのCSF(重要成功要因)や戦略目的の成否に直結する影響力をもっています。言い換えると、社長、各マネージャー、従業員がKPIに集中している時、組織はひとつの目標に向かい自走できます。特に1,2,3は「KPI管理の始め方 基礎編」でもご説明したとおり、自分のチーム内だけ始める等、先ずは始める必要がある場合にも必ず確認する必要があります。
3. 勝つKPI2つのルール
3-1.10/80/10 ルール
KPI、PI、KRI、RIの違いをご説明しましたが、それぞれの個数の比率はだいたい10/80/10ルールに従う必要があります。10/80/10ルールとは、1つの組織に10個程度のKRIが存在し80個程度のRIとPIが存在し、10個程度のKPIが存在するというルールです。それ以上の計測が必要ケースはほとんどないといっていいいでしょう。多くの組織は最初80個程度のRIとPIでは全く不足していると感じると思われます。しかし、ひと度しっかりと調査をしてみると、多くの指標はある指標の組み合わせでできていることに気づくはずです。
また多くのKPI管理チームの担当者は最初たった10個しかKPIが作れないとしたらそれでは制限が多すぎると感じるでしょう。そして、30個まで増やせないかと確認してくるはずです。しかし実際には慎重に分析を開始すると、その組織が多数の事業部を持っていない限りKPIの数はすぐに10個もしくはそれ以下まで落ちてくるはずです。複数の事業部がある場合は、10/80/10ルールは事業部毎に適用されます。
3-2.経営陣による積極的介入のルール
KPI管理による劇的な業績の向上のためには、経営陣が適切なタイミングで介入・判断することが非常に重要です。社長は日々集計されるKPIをつぶさに観察し、異変を感じたら電話を片手に担当者を呼び出す必要があり、その社長のコミットメントが非常に重要な組織文化となります。もし貴社の経営陣に届けられるKPIが数日遅れているのであればそれは全く使い物になりません。KPIはリアルタイムに準備されるべきものです。推薦されるレポーティングフレームワークは下記の通りです。
いくつかのKPIは日次、もしくは24時間いつで更新されるべきです。その他のKPIは週次でよいものもあります。多くの組織ではアクションの実行、完了が課題となることが多々ありますので、KPIにはいくつの重要顧客とのMTGが実施された等、実行(エグゼキューション)に関するKPIも含ませることを考えましょう。通常の週次にレポートされるKPIだけでは、十分な速度が出せません。この実行力、すなわち「完了」に関するKPIは、組織風土を革新的に改善し、プロジェクトやタスクの完了数が劇的に上昇するはずです。
RIやPIは日次、週次、隔週、月次等、様々な時間軸で計測されます。KRIは取締役会へのレポートに最適なため取締役会の周期に合わせた月次などの集計が適切と言えます。
KPI管理の導入は往々にして指標管理と組織の成功要因に関して知識のないスタッフにより始められます。そのため、KPI管理を成功させるためには、常にスタッフに対してその指標に対してどのようなアクションを取るべきなのかを明確にし、その行動結果まで計測しているのかを確認する必要があります。その上で、必要であればいつでも社長を初めとした経営陣が、担当者を呼び出すというプレッシャーが、よいKPIの循環を生み出すのです。
以上、勝ち続けるKPIとは何かについてご説明を致しました。ご質問がございましたらご遠慮なく下記までメールをお送り下さい。
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