STEP5. 勝つKPIの目標を設定する
KPIの目標設定の目的
驚くべきことに、多くの会社でKPIを設定したままで目標がなく運用されているケースがあります。KPI管理は計測することが目的ではなく、計測したKPIが自発的に従業員に働きかけることですので、目標がないとその数字がいいのか悪いのか判断できません。目標の設定方法はいろいろな方法がありますが、下記のいずれかもしくは全てを用いて、アグレッシブと達成可能の間の絶妙なバランスを狙います。
過去のトレンド 最も簡単かつ、正確な設定方法です。殆どの企業が採用しています。この方法を取る最大のメリットは簡単であるということですが、デメリットはどうしても過去に引きずられるためアグレッシブな目標に挑戦しづらくなるという点です。
市場のトレンド こちらもよく使われる設定方法です。市場自体が昨年対比25%で成長しているのに、自社が20%しか成長しないと、市場全体で見ると自社のシェアが食われているという事になってしまいます。成熟した業界では比較的市場トレンドを入手しやすいですが、新しい業界の場合、データ自体を入手できないことがあります。
積み上げ トレンドとは関係なく、社内のリソースと資金、能力から積み上げ式に計算していく方法です。新規ビジネスの事業計画などでよく使われます。いくら投資をしたらいくつのリードが得られて、そのリードがいくらの売り上げを作るといったものです。容易に自社の限界生産能力等を計算することが可能ですが、多くの変数を使わなければならず、出来上がった数字が、過去のトレンドとも、市場のトレンドとも合致しないという事がよく起こるために慎重に採用する必要があります。
重要なのは、いずれの方法で採用したとしても、実際にテスト運用をして調整していくことです。また、その調整能力を柔軟に社内につけておかないと、年初にいずれかの方法で設定した、現状と乖離した目標が独り歩きし、従業員誰もが目標との乖離を気にしなくなり、結果、業績が向上しないという事態に陥ってしまいます。そういった事態を避けるために、事業責任者にKPI目標に対する柔軟性を与えておきます。
KPIの目標設定のプロセス
以上の検証が終わったら、目標設定は下記のようなフローをもって実施します。
会社の目標を達成するために会社は運営されているわけですので、会社の結果目標はトップダウンにて決定されることが通常です。
KPI管理の成功において最も重要なことは 最終的な会社の結果目標と、その売り上げを構成するプロセスの目標は必ず、常に連動しているということです。通常本書のステップどおりにKPI設定をしてきた場合、勝つKPI管理導入9ステップの2ステップ目で説明した、因数分解をした各要素がKPIになっているはずですが、これらのKPIの目標を設定することで、全社の結果目標が達成できるかをクロスチェックすることは非常に重要です。
トップダウンで降りてきた会社の結果目標に対して、現場の責任者と共に構成要素のプロセスKPIのレビューをして実現可能性を調査します。必要に応じて、経営陣と交渉と調整し、一旦正規の目標として設定されます。
その後一旦1ヶ月以上試運転をし、問題がなければ正規の目標として設定されます。その後毎月、目標の妥当性をレビューします。そして少しでも修正が必要であれば、柔軟に修正をした上で継続して測定をしていきます。
年度予算は予算で守らなければならないのは理解しますが、あまりにも目標が乖離してしまっている中で年初の年度予算を目標にKPIを設定することは止めるべきです。そのような行為は従業員のやる気をなくさせ、KPIはどうせ達成しなくてもいいものと扱われるようになります。そうなってしまえば、もはや会社の業績を向上させることはできません。社長を筆頭とした経営陣は、KPIの目標設定に関してしっかりと時間を割き、ある程度の柔軟性を持たせることを理解しておく必要があります。
KPIの目標設定時によくある課題
目標設定時に普遍的に出てくる問題は下記の2点です。これらについてKPI管理チームと一丸となり、問題解決にあたっていく必要があります。
技術的課題
よくある技術的な問題として、そもそもデータを取得できない、過去の数字がないため予測や目標が立てられない、データを取得できても正確ではないので目標を設定できない、等いろいろな問題が発生します。真のKPIと確信がある場合は最初からデータを取得するための投資と開発が必要ですが、先述の通り、一発で正しいKPIを抽出できる組織は非常に稀です。従い、技術的な問題に直面した場合は先ずは何か手軽な回避策がないかを検討し、必要であれば関連して比較的取得しやすいデータに変更する等、臨機応変に対応していく必要があります。また、全社目標と各チームのKPI目標のがより同期がとれたものとなります。
対人的課題
一方で技術的には問題がなくても、目標が高すぎて納得出来ない、まじめに取り組まない、等の実際の担当者がすんなりと受け入れてくれないという問題も多々発生します。そのような事が起こらないためにも、KPI管理チームは、確実に1ステップずつKPI管理の仕組みを導入していく必要があります。
また、業績評価と目標を過度に紐付けると、担当者が目標達成の為に手段を問わず、不正を働くというリスクを招く事があります。こちらも、社の戦略目的をしっかりと浸透させなかったために、自己の利益だけを考える社員がでてしまうため発生します。大切なのは、社のビジョン、ミッションから、目標が設定され、その目標が各人の日々の業務に紐付いているというKPI管理の仕組みを構築することです。
本ステップのまとめ:
組織の目標に沿ったKPIの目標を持たすことで、従業員が自発的に業績向上のために動くようになります。
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